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Shuta Hoshino
Shuta Hoshino, 元石油ガス探査データプロセッサ(2007-2017)

相対性理論で一番誤解が多い物理現象は質量が増加すると言われている相対質量です。実際には物体の本質的な質量は増加しません。この問題は少数を除いた物理学者にもよく指摘される事で、今後の誤解を防ぐためにも相対質量は"有効質量 "と定義をした方が私は良いと思います。比較的新しい本には相対質量という概念自体すら省かれているほどですが、現代に至っても間違った教えは数々の参考書に残っています。

もし、物体の本質的な質量が相対性で本当に増加した場合をよく考えて見ると大変な不合理が生じます。例えば地球の座標系に対して宇宙で光速に近い速さで飛んでいる粒子の座標系を考えます。この粒子から見ると地球の質量は静止している時よりも遥かに増加しており結果的にその質量はトルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界を超えブラックホールになってしまいます。つまりそんな任意の座標系を仮定するだけで地球の生存すら否定してしまうという全く不合理な事が起きてしまうのです。

最初にどうして有質量物体は光速に達せない理由から検討します。これから幾つかの式を紹介しますが、まずは式を簡潔にするために光の速度をc=1、とします。そして力学を四次元で表します。これは相対性理論に限った不自然な扱いと思われますが、実は古典的なニュートン力学をも"幾何学的"に表すには四次元でないと不可能なんです(これは参考書、"Gravitation" by Wheeler,Misner & Thorne にも挙げられている事です)。つまり四次元空間は力学を幾何学的に表そうとする際の自然な結果なのです。平らな四次元時空間(ミンコフスキー空間)での物体の四速度は次の様に表せます。

[math]\left( \frac{dx^\mu}{d\tau} \right) = \gamma \begin{pmatrix} 1 \\ \vec{v} \end{pmatrix} [/math]

四次元上座標は、[math] x^\mu = (t,x,y,z)[/math][math]\tau[/math] は固有時間、[math]\gamma[/math] はローレンツ因子, [math]\vec{v}[/math] は空間方向の速度つまり日常的に使われる速度です 。

向きと関係ない四次元上での速さは次のノルムで計算されます。

[math]\sqrt{-\eta_{ \mu\nu} \frac{dx^\mu}{d\tau} \frac{dx^\nu}{d\tau} } =1 [/math]

[math]\eta_{ \mu\nu}[/math] は平らな時空での計量です。

ここで不思議に思えるのはどんな物体も四次元上での速さは常に一定の値、1を取ると言う事です。貴方も私もそして全ての有質量物体は同じ速さで四次元を進んでいます。ただ単に方向が違うだけなのです。つまり私達が普段使う空間方向の速度が早ければ早いほど時間方向の速度が落ちます。そして静止状態ではフルに時間方向へ進んで行くのです。

それでは光はどうでしょうか?これもまた不思議な事に光の四次元上での速さはゼロです。全くの静止状態です。相対性理論に興味がある方は下の様な光円錐図を見た事があると思います。

(光円錐 - Wikipedia)

この光円錐の表面は四次元時空でのゼロの速度を表した物で、ミンコフスキー空間上でのヌルベクトル と言われる物です。つまり私達を含め質量のある物体が光速に達せられないと言うよりは、四次元上で私達は静止する事が不可能なのです。光が私達から離れていくのではなく、私達が常に四次元上で移動する宿命にある、しかも皆同じ速さで。そして本当に動いていないのは光の方なのです。でも速さが0か1の値しか取らないって、まさにコンピューターのバイナリの世界みたいですね。

次は相対的な運動量を考えます。それは次のように表せます。

[math] (p^{\mu})= \left( m \frac{dx^\mu}{d\tau} \right) = m \gamma \begin{pmatrix} 1 \\ \vec{v} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} E \\ \vec{p} \end{pmatrix}[/math]

ここでの [math]E[/math] は相対エネルギーで, [math]\vec{p}[/math] は相対運動量です。質量増加はこの相対運動量をニュートン力学的で解釈してしまった誤解から始まったのだと思います。[math]\vec{p}=\gamma m \vec{v}[/math] を古典的な運動量 [math]\vec{p}=\tilde{m} \vec{v}[/math] と比較して [math]\tilde{m} = \gamma m[/math] と考えるのは根本的に間違っていると思います(古典的運動量は間違っているので、間違った物と比較しても噛み合いません)。質量の様な内存的な値は全ての観測者が同意しなくてはならない値、先程の様にノルム(みんなが賛成できる値)を今度は運動量で計算すると、

[math]\sqrt{-p_{\nu}p^{\nu}}=\sqrt{-\eta_{ \mu\nu}{p^\mu} {p^\nu} } =m [/math]

となりこれが不変である固有の質量であると言う事になります。これ以外に"質量"と言う値は存在しません。これでどうして相対質量と言う用語自体が紛らわしいのかが分かって頂けると良いと思います。ちなみに上の二つの式を組み合わせると有名なアインシュタインのエネルギー方程式が現れます。

[math]E^2 = m^2 + p^2 \rightarrow E^2 = m^2c^4 + p^2c^2 [/math]

*右側は次元解析で1になっていた光速cを元に戻しました。

Tanimoto Shuya
Tanimoto Shuya, 建築家に勤務

光速に近くなくても、相対的に運動すれば、その運動量が静止質量に添加され、多少なりとも質量が増大しています。 光子は静止質量がなく、その質量は運動量のみで、その値はエネルギーの最小値であるプランク定数hに基づいているので、それ以下の速度はとり得ないのです。

「運動量だけが飛んでいる」という意味では、「加速する」という事は光量子を与える事であり、どんどん質量が増大して当然です。